よりぬきzig3月号(2022)
ジョンミリアス脚本の2011年発表のSF作品を見返している。
2020年に世界的なパンデミックが起きて、資本主義社会の基盤の瓦解を露呈し、ある社会主義的国家が核による侵攻を開始、2030年には欧米を支配するというプロットである。
その作品の細部設定で、2021〜22年にロシアが資本主義絡みの紛争を起こすというのがある。当然、偶然なのだけど、予言書のようだ。少なくともパンデミックとロシアのごたごたを、2011年の想像力でピタリと言い当てている。偶然なのだけど。
2022.3.3
「あなたらしくないね」と言うと「あなたに私の何が分かるのか(いや、何も分からない)」と言われたので、「なぜあなたは私があなたを分からないということが分かるのか(いや、分からない)」と言った。という内容の荘子の文。高1漢文。
2022.3.4
思想をもつこととは、端的に言って多数決に流されないということ。感覚的に世界中が敵になったとしても、それを選ぶことを貫くということ。
2022.3.6
妻の職場へ行く。この人にはこう、この人にはこう挨拶をしてくれという諸注意を受けている。
夫であることを伝えると、オフィスのちょうど奥の方でふふふと女の笑い声。あれがよく妻の愚痴に出てくる高飛車なババアだろう。俯きつつ視線を向ける仕草に異常な攻撃性の高さを感じた。
妻の職場を後にする。両親と大型商業施設で合流。商業施設の若いアメリカ人の身体のような喧騒や光が、老いた両親に否応なく降り注いでいて、少しつらい。幾日も時を隔ててしまったのだな、と思う。
2022.3.11
トラップも、例えば伝統的なブルースやカントリー、或いは日本の演歌のように、過度に形式化、フォーマット化している。つまり、聴き手としては新しいものを聴きたいのではなくて、形式を反復したいということで、マッサージ的な快楽に近い。
筋肉質の黒人が上裸に大きな装飾品を付けているということの意味。そういうことも含めて本気で聴く。
2022.3.13
銃口を額に突きつけられるようにして検温され、「はい、ありがとうございます」と言われ、会場に入る。
猥褻な話が交差する。裁判で勝って保険金が200万下りる話。尻よりも脇、という話。
ネズミザメの心臓の刺しが美味い、という話。
Charli XCXの新譜を聴きながら、人の話を聞く。
年に三度ほど顔を合わせる同業者の女。まだ若いのに水の流れのない用水路で死んだように漂う鯉のような目をしている。簡単な挨拶をする。やれそうだ、と思う。
2022.3.21
久々に子に会う。机と皿の見分けが付いてない。机に納豆を盛って食べてる。
2022.3.24
デイヴは、カートの死を背負って、新バンドを宅録で始めて、ドラムにこだわり過ぎて適者の見つからぬ中、弟子とも相棒ともいえるテイラーと出会って、世界的なバンドになったがしかし、また仲間の死を経験することになったのだ。一ファンとして毎日のようにそのことに思いを致す。
2022.3.29
公文書で私が使う言葉が、過剰で趣味的なので、ちゃんとした公的な文体に正してくださいと怒られた。私は厭ですと思った。
桜が満開の公園で子どもと遊んで帰った。
2022.3.31