承認欲求の骨

総合的な言語感覚を磨く練習です。

2018-01-01から1年間の記事一覧

淡家朴 『レクイエム』(2018)

「私はお嬢様だから、毎日おいしい物を食べてるの。これすごくおいしいのよ。」 呆けた婆さんが介護用のプラスチック皿を震えながら持って言った。何度も自動食洗機の高い水圧に洗われて色の掠れたクリーム色が儚くて、介護用の先割れスプーンを持つ手の力が…

淡家朴 『情緒と言葉』(2018)

情緒と言葉に就いて、私が知る事を書きます。私は夢想家だと云う謙遜の様な自負の様な言葉を私は時々思う。此れ等は私の経験上どうも確からしいと云う分析に基就いて居る。若し乎すると其れは夢想では無いのかも知れ無い。私の頭の中には、私の思惟に飼育さ…

淡家朴『私とTwitter』(2018)

私は凡そ大学二年位からtwitterを辞められ無いで居る。此れは恥ずべき事態なの乎もしれ無い。少し考えて見た。Twitterで綴ったツイートを偶さかに省見ては、目が滑る。余りにも文体が其の場限りと云う感じで、自分で見て居て阿呆らしく成る。故に、私はツイ…

淡家朴『幻滅抄』(2018)

私は私の身の上に置かれた事に就いて書く事しか出来無い。故に、物語を書く事が出来無い。故に、私は私の身の上に就いて熟考し、文を得る事しか、物を書く術を知ら無い。故に、私は熟考する。時に飯事を忘却せ使むる程に熟考を辞めない。熟考し厭きる迄が、…

淡家朴『闇から雑穀を簸る』(2018)

私は兎角、気散いで居た。もう戻る事は出来ぬ処まで遣って来て居乍ら全く帰りたかった。 故に暗い道を、力弱く照らす陰鬱な灯りを唯一の頼りにして無視する様に渡る他無かったし、私は私の仕事と結婚とに殆ど失明して居たに相違なかった。掛る獨白に一抹だに…

淡家朴 『死靈』(2018)

私は既に、人生に飽きてしまゐました。これから幾年も生きてゆかなければならないと想うと、やれません。はあ、ええと想うのです。 従て私は極めて素朴なままで在りたいと願うばかりです。何も目指さずに何も要求せずに、暇で暇で仕様の無い怠惰の大草原を、…

淡家朴『駅員』(2018)

美男子走性の眼球とその他諸々の神経の集合体は、自己の顔面という概念を忘却し、無人駅のふりをしている。 私は、無銭乗車の常習犯を今日も捕まえられないでいた為、無用に苛立っていて、 「ちよっと〻、おじやうさん、そんなところで、そんなかっこうをし…

川井躁葉『憂と鬱』(2018)

オマエは何を目指して跳ね回る? 当事者が死ねば終わりか? ニンゲンをコケにしやがって 黒い影が今日も呼吸をする この存在感は、まさに生き霊 トランス状態が治んないよ だれかのワクチンにもならないなら これは、ただのウィルスで 何でもありの現代の ア…

川井躁葉『負け犬の青春群像』(2018)

いじめられていたせいでもある いじめていたせいでもある あやまったせいでもある あやまられたせいでもある カーストがワーストだったせいでもある スタートがゴールだったせいでもある 遊び場を拒んだせいでもある アニメが好きだったせいでもある ヤンキ…