淡家朴『育児』(2019)
乳児が泣き喚き手足をばたつかせる。
この、画一的な反応の反復。
その都度、不快感の原因を推量し、それを取り除く。
この、画一的な行動の反復。
やがて乳児が泣き止み、手足をばたつかせることを止める。それを以って実践的要求の完了とする。少し落ち着く。
この、画一的な感動の反復。
生命を取り扱っているにしては、何と味気ない、画一的な行為の反復であろうか。
乳児の目を見ると、現実を統合していない。
虚ろな目である。
言語を獲得し、世界を分節した者にはすることのできない、虚ろな目である。
或いは精神分裂者のそれにも似た。
プレコックスゲフュール。
空笑とジスキネジア。
だんだんと虚しくなってくるので、
うっかり話しかけてしまう。
思いつくことは、殆ど決まっている。
予祝と前未来的な懐古。
乳児を抱えて、他のことはあまり思いつかない。