承認欲求の骨

総合的な言語感覚を磨く練習です。

淡家朴『天職』(2019)

 

 人間が、その才能を開花させる為の条件は何か。それは、「適性に合うかどうか」ということではない。それは、他者からの「余人を以っては代えがたいものとして、あなたを召喚したのだ」という意識の宛先になることである。

 

 これを、宗教用語で「召命」と呼ぶ。「神に呼ばれて、ある責務を与えられる」ということだ。世俗的な言い回しとしては、「天職」というものがある。どちらにせよ、それらの概念は、就職情報産業の作る適性検査で見つけるものではない。言い換えれば、「天職」とは「自己決定」するものではなく、「他者に呼び寄せられること」である。自分に合った、ふさわしい仕事を見いだすというのは、本質的には、このような受動的な経験をいうのである。

 

 

参考文献

内田樹『街場のメディア論』