承認欲求の骨

総合的な言語感覚を磨く練習です。

YouTube LIVE配信ELLEGARDEN(2020.8.28)を観ました

 

2011年、かつての恋人に私はお別れを告げた。

 

もう二度と逢わないつもりのお別れだった。

 

ここでお別れをしなければ、お互いに、自分たちのあるべき"将来"に居合わせられないような気がしていたからだ。

 

それは、当時の私たちにとっては、重すぎる荷物のような"将来"だったのかもしれない。(実際、こんなに軽いのにね)

 

 

私と別れたら、この人には、多分、つらい思いをさせるだろう。だから何か、お守りを渡さないといけない。

 

そんな一心で、当時、大好きだったバンドの、その「活動休止」という悲劇を形容するような一曲を、彼女に伝えようとした。

 

それが、ELLEGARDENの「虹」であった。

 

どこかで私は、この恋愛に「活動休止」であれ、ということを祈っていたのかもしれない。

 

「もう逢うの、やめよ。お互い勉強とか、忙しくなるしさ。だから、頑張ろうね! でも、君に出逢えて良かったとほんとに思ってる。だから、この出逢いの象徴だと思って、エルレの『虹』って曲聴いてよ。これ聴いて勉強がんばろ。」

 

 

多分、そんなようなことを、当時高校2年生だった私は、彼女に言ったのだと思う。

 

 

10年以上の時は流れた。

 

 

ーー2020年。8月の終わり。

 

「今日、20時からエルレの生配信あるの知ってる?」

 

夢を醒ますような、深い声が聴こえる。

 

 

ELLEGARDENは、永遠とも思われた活動休止を終えていた。

 

ハッと胸を突かれたのは、その時だった。

私にELLEGARDENの活動再開を教えてくれるのは、何と当時の彼女の声なのだ。

 

YouTubeライブ配信は三人で観ていた。それもとても不思議だった。

 

私も彼女も、涙を流している。

飄々と歌うボーカルの細美武士

 

ELLEGARDENの『虹』が、生演奏で流れている。

 

2011年の私は、この瞬間を、きっとありありと見ていたのかもしれない。

 

 

2020年8月の終わり。本当に、不思議な体験だった。活動を再開したELLEGARDENの生演奏。そして、10年前、永遠かと思われたそのお別れの、その彼女が、私の子どもを抱いて、涙を流している。

振り向いて笑う。泣きながら笑う。

 

きょとんとした娘の顔が、可笑しみをまた誘う。

 

私は、不思議な狡猾な気分の中で、これで良かったのだな、と確信した。

 

私は、彼女の顔を見て、「あなたに逢えて良かったよ」と言った。