承認欲求の骨

総合的な言語感覚を磨く練習です。

映画鑑賞第9回『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』(2020)

 

去年日本で一番有名だった映画を観て来た。

 

鬼滅の刃」といえば前、「討鬼伝」というPSPのソフトを中古で100円で買ってそのまま一度もプレイしていないことを思い出した。

 

IMAX」という500円高いカナダ製の映写機でしか演っていないというので、それで観る。割引日だったが割引にならない。

彼女と『天気の子』を観て以来の映画館だった。彼女との子は保育園に預けてきた。反出生主義者に怒られそうである。ポップコーン、ペプシ、フライドポテト、チキンナゲットも付けて大盛り上がりである。

 

 

本編は墓参りをするシーンから始まる。墓参り、というのがいい。仏教的である。東日本大震災西日本豪雨、コロナ禍で命を失った人々に思いを致す。

 

序盤、炭治郎一行によるギャグアニメのような快活おもしろやりとりがあって会場に微笑が齎される。それは何か『銀魂』や『ギャグマンガ日和』、あるいは『テイルズシリーズ』のおもしろやりとりのようである。声優たちの仕事を観せられている、という感じ。声優はなりたい人がたくさんいて、なれない人もたくさんいて、声優志望で上京して、結果AV女優になってカメラの前でヴァギナを開く人たちもたくさんいるのだということに思いを致す。声優養成学校は体育会系で、ものすごく厳しいところらしい。コミュニケーション能力のない人々は、速やかに淘汰されて実家に帰るしかない。様々な呪いやカルマの頂点に、今一番人気のアニメの、このおもしろやりとりがあるのだ。炭治郎役の声優、花江夏樹は29歳。双子の娘のパパ。育児をする様がTwitterなどで人気である。禰豆子役の声優、鬼頭明里は26歳。ラブライブ!シリーズでも声優をしている。売れっ子。当然、歌手デビューもしている。グーグルで画像検索する。かわいい。AV女優の涼森れむに少し似ている気がする。

 

 

煉獄杏寿郎が登場する。

非常に吊り目で、クジャクの羽根の紋様みたいである。

中山昌亮の『後遺症ラジオ』に登場する吊り目の異形を少し思い出す。

 

 

魘夢が登場する。

目の下に四角い模様がある。

手の甲が口になっている。

燕尾服を着ている。丸尾末広の描きそうな燕尾服。初期のあぶらだこで、 長谷川裕倫がライブの時に着ていたような燕尾服。

 

髪型は毛先がピンクのボブ。毛先は『化物語』の千石撫子のような短冊形をしている。保育園に子を迎えに行くと時々出っくわす、毛の裾にピンクを入れたママを思い出す。

 

声優は平川大輔

スクールデイズ』でダブルヒロインの片方に惨殺される主人公、伊藤誠の中の人。

 

 

「無意識領域」とか「精神の核」といった言葉が出てくる。

 

フロイトの無意識、エス、イド、リビドーといった、お道具箱の中に入っている知識を思い出す。

 

 

炭治郎の夢。

 

夢の中では山間の庵で山菜などをとって慎ましやかに暮らしている。

 

炭治郎は兄弟が多い。

家族を大切にしている。

 

その光景を、しかし実際は、アルファードに乗ってやってきたバカみたいな子どもたちが観ているのだ。

その瞬間、少しいやな気分になる。

ヴォクシーやステップワゴンにベイビーインカーのステッカーをむんずと貼りっ付けて、映画館のあるショッピングモールまでやってきた家族がたくさんいるのだ。高収入の職につき、ライバル会社を出し抜き、使えない部下や上司の悪口を言い、家やマンションを買い、女性を性的に支配し、生殖行動を繰り返し、子どもを産ませ、育てさせている男がたくさんいるのだ。

そのことを忘れてはいけない。

 

 

煉獄杏寿郎の殉死。

 

猗窩座という鬼との戦闘シーンの音が非常に大きく、頭痛になる。

 

不死身の鬼になれと翻弄する猗窩座に対して、「老いることも死ぬことも人間という儚い生き物の美しさだ」と喝破する煉獄杏寿郎の姿には確かに、えも言われぬカタルシスがある。日本では受けるだろう。キリスト教圏では結構微妙なセリフだとも思うけれど。