承認欲求の骨

総合的な言語感覚を磨く練習です。

ゲーム考察 第2回 『龍が如く7 光と闇の行方』(2019)

 

ゲーム考察2回目、

龍が如く7 光と闇の行方』

 

  "2001年1月1日。関東最大の極道組織「東城会」の三次団体「荒川組」に所属する「春日一番」は、実の親のように慕う組長の荒川真澄から若頭の沢城丈が犯した罪を被るよう頼まれ、愛する組と尊敬する親父のために出頭を決意する。

時は経ち、2019年。春日は18年にも及ぶ厳しい刑務所生活を送りながらもついに出所するが、出迎えてくれる者は誰一人いなかった。

一人寂しく故郷である神室町へと戻る春日だったが、そこで目にしたのは「神室町3K作戦」という警察の施策により東城会は崩壊し、警察と関西最大の極道組織「近江連合」に完全支配された神室町の惨状であった。

この惨状を作り上げたのが荒川だということを知った春日は、真意を直接確かめるべく荒川の元へと向かうが、そこで待っていたのは再会を喜ぶ笑顔ではなく冷酷な銃口だった。

荒川に撃たれ生死の淵をさまよいながらも何とか意識を取り戻した春日が目覚めた場所は、「どん底の街」と呼ばれる横浜の「伊勢佐木異人町」にあるホームレス街であった。"

(Wikipedia龍が如く7 光と闇の行方』ストーリーより)

 

今作は、サブタイトルに「光と闇」とあるように、象徴的な二項対立やコントラストが、極めて明確に、闊達に、愉快に表現されている。また、光と闇のように役者が拮抗するのも面白い。例えば、主人公、春日一番には、本作のラスボスである荒川真斗という存在が、宛らユング心理学のシャドー理論のように春日の存在へと対置するのである。

 

ラストの展開では、春日一番と荒川真斗が、宛ら村上龍の小説『コインロッカー・ベイビーズ』(1980)のキクとハシのように、どちらもコインロッカーから取り上げられたという経緯が明らかにされる。加えて、7では、そこに「取り替え子」というモチーフも加わる。方や、ヤクザに拾われた者、他方でソープランドの店員に拾われた者である。光と闇のように、互いに拮抗しながら、その人生を交差させていく。それが事後的に了解されて、この作品は面白いのである。

 

「極道」というアウトサイダーの物語作品を極めてクールでナイスガイな主人公桐生一馬の静かな視点から一歩引いてそのマチズモを眺めるというのが、『龍が如く』シリーズの味噌であったが、今作の7は、そうはいかない。主人公の春日一番は、猪突猛進、特攻隊長、ヤンキー気質で落ち着きがない。対峙する敵勢力も、メインが韓国マフィア、中国マフィアといったとりわけオルタナティブな面子である。

しかしその猥雑な暗闇の中へ、仲間思いの純粋な男が、信念を貫徹すべく突進するその様は、大変愉快であった。少年漫画やRPG作品を踏襲したパスティーシュも良かった。