承認欲求の骨

総合的な言語感覚を磨く練習です。

映画鑑賞第3回『時計じかけのオレンジ』(1971)

 

iTunesレンタル(¥407)で、スタンリー・キューブリック[アメリカ]1928〜1999の『時計じかけのオレンジ』(1971)を観ました。

 

「近未来のロンドンとされる異世界を舞台に、主人公の非行少年が、特別な治療を受け、ロボット的に更生し、再び人間性を取り戻す。」

 

というお話です。

 

R18作品で、強姦、輪姦、撲殺、リンチ等の場面があります。イギリスでは劇場公開禁止となりました。

 

確かに、暴力を賛美するような扇情的な映像作品ともいえますが、主人公の台詞や悪趣味な小道具には、不思議な魅力があります。

それは、ビートニク、ビートジェネレーション文学に通底する「ヒップさ」「クールさ」のような、「不謹慎な魅力」です。

特に、「裸婦人形の乳房から、覚醒剤入りミルクを注ぐ」というような発想は、残念ながら、頭がおかしいとしか言いようがありません。

 

これは、言葉が悪いですが、「スタンリー・キューブリックという一人の気違いの作った映画」と言うしかない。

そんな、危なっかしい熱量全開の映画でした。

 

公開された1971年、という時代が時代だったのかもしれません。

ベトナム戦争文化大革命五月革命といったトピックの60年代を終え、冷戦下で、「思想」と「科学」がぶつかり合っていた時代。

 

"「革命」への暴力を抑え込もうとする「管理」主義的なアメリカの徹底ぶりが、どこかナチス全体主義にも見える"

 

というような嫌悪感が、この映画の暴力的な演出に、説得力を与えているように思いました。

 

余談ですが、実はこの映画、高校の美術の教科書に載っています。青少年の健全な心身の発達に対して、著しく教育的配慮を欠いていると言われそうですが、私は個人的には、全然いいと思います。「責任は取らないが、暴力なるものを、学際的に踏破してみよう。」というような考え方は、嫌いではないのです、困ったことに。