映画鑑賞第2回『マネー・ショート華麗なる大逆転』
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2015)をiTunesレンタル(¥407)で、観ました。
1978年、住宅ローンを担保にした「モーゲージ」という債権が発明されました。
「住宅ローンは、普通、みんな返すだろう」
「住宅ローンを組めるような社会人なんだから、大丈夫だろう。銀行も、当然、貸し付けの時に信用調査をするわけだし」
ということで、多くの投資家たちが、この「モーゲージ債」を買いました。
そして、「モーゲージ債」は売れに売れ、銀行には巨額のお金が流れ込みました。
そして、「モーゲージ債」は、とうとう売り切れました。
これに味をしめた銀行は、「サブプライム」という「モーゲージ債」をつくります。
「サブプライム」
つまり、「サブ(副)プライム(優良)」
良いように言っていますが、
実際は、所得の低い層のこと。
「家を買うほどの稼ぎのない人たち」です。
「家を買うほどの稼ぎはないのだけど、家が買えるなら欲しいし、これからがんばる」
という人が、アメリカに、およそ5000万人いました。
この「5000万人分の住宅ローン」を証券化して、銀行は投資家に売ったのです。
2001年、当時この「サブプライム」は、完璧な金融政策、経済政策と言われていました。
「サブプライムが破綻する」という状況は、あり得ないとされていました。
もしサブプライムが破綻したとして、その時は何百万人もの人が家を失うことになるし、そんな状況は、あり得ないだろう。前例もない。
「前例がないから、あり得ない。」
そう笑って唾棄されていたそうです。
しかし、蓋を開けてみると…
2001年から2006年のうちに、「何百万人もの低所得層の人々が、サブプライムローンで買った家を、"夜逃げ"、"破産"というかたちで手放していました」
しかし、そのことを、銀行は隠蔽し続けました。
「サブプライム」の信頼と売り上げを守るためです。
結果、サブプライムローンは破綻します。
結果、
800万人が職を失い。
600万人が家を失いました。
というお話です。
サブタイトルに「華麗なる大逆転」とあるように、サブプライムの実態を知る者、知ろうとする者がいなかった2001年から2006年のうちに、サブプライムローン破綻を見抜き、銀行と「モーゲージ債破綻時の保険」を契約し、26億万ドルを稼いだ男も描かれています。
しかし、この映画の見どころは、そこではないように思います。
先日、「銀行員を目指している経済学部志望の高校生」と話していて、経済ってなんだろう。金融ってなんだろう。となりました。
金融。
「金を融通する」と書いて、金融。
つまり、
「後で利子をつけて返すから、お金貸して」
というやりとり。
これを、利用した商売。
それが、金融です、ね。
家が欲しい。
でも、お金がない。
いや、今は、ないだけ。
だから、お金を借りて、家を買う。
銀行からお金を借りて家を買う「住宅ローン」という"借金の文化"を「一人前の社会人の証」として一般化、標準化したのがアメリカです。
この文化は日本にも当然伝わりました。
かつて、多くの人が家を買いました。
そして、家や車を買うことで、「一人前の社会人」であると認め合ったのです。
今でも、「車を買う」「家を買う」ということが、「社会的に"一人前"であることの証」のように扱われています。
「ある程度の安定した稼ぎがあって、社会的にも信用されている」ということ。それを証明してくれるのが、「住宅ローン」です。
そんな「一人前の証」である「住宅ローン」を使い…、
いや、「家を買うことで、社会的に一人前になったのだと人々に錯覚させる資本主義社会の構造」を使い…
さらには、
「家を買うことで、社会的に一人前になったと認められたい、低所得層の人々の心理」を使い…
アメリカを、ひいては世界を、
金融危機に陥れたのが、今回、この映画の内容である「サブプライムローン問題」です。
この映画の演習課題は、二点。
「これをすれば一人前」
「○○ならば認められる」
そういったことが幻想であるということに気づかなければならないということ。
そして、
「そんなことは、前例がない」
と、たとえ99.999%の人が唾棄したとしても、
それがゆえ、それだからこそ「批判的に考察する」べきことがある。
ということです。
アメリカが「虚飾にまみれたおべんちゃら経済」のお手本を示してくれた。
だから、それと同じことをしないように、
経済のこと、学ばなければならないのだと思います。