承認欲求の骨

総合的な言語感覚を磨く練習です。

映画鑑賞第1回『閉鎖病棟-それぞれの朝-』(2019)

閉鎖病棟-それぞれの朝-』(2019)をiTunesレンタル(¥407)で、観ました。

 

監督,脚本:平山秀幸

原作:帚木蓬生

出演:笑福亭鶴瓶綾野剛小松菜奈

 

 

死刑執行中の過失の隠蔽の為(という極めてフィクショネスフルな設定)、世間から抹殺された存在として精神科病院で生活を送る笑福亭鶴瓶

 

と、(おそらく)統合失調症による幻聴発作の治療の為(どういう経緯かは分からないが、家族からはツマはじきにされている)、精神科病院に入院した、綾野剛

 

と、母の再婚相手の父から性的虐待を受け、懐妊し、その後に鬱病となって、精神科病院に入院(その内実は母親の娘への憎悪によるもの)した、小松菜奈

 

 

この三人が、同じ精神科病棟で、束の間、ささやかな友好関係を築くも、それぞれの理由(殺人、退院、レイプ被害)によって、一度離れ、その後に法廷で(半ば強引な設定を経て)顔を合わせるも、彼らの人生が再び交わることはなかった的な終わり方をする作品でした。

 

 

個人的な見所は、笑福亭鶴瓶のハードコアな演技。

笑福亭鶴瓶は劇中で2度、計4名を殺害しますが、その演技がすごい気迫で、よかった。ちょっと全身が身震いしました。こわいな、と思った。(夢に鶴瓶出てきてうなされそう)

 

綾野剛は、精神科病院の中ではナイスガイとして立ち居振る舞いながら、家族への拭い去れないトラウマ(これは作中で語られることはありませんでした)と、それによる統失症状が、二項対立的に表現されていました。とくに幻聴発作のシーン。ほんと、上手で、胸が重たくなりました。そうそう、こういう感じになるんだよね…。

 

 

小松菜奈は、映画終盤に、「ああ、これから、あのザ悪役という感じの俳優にレイプされるのか…」と思ってからが結構しんどかった。というか、これは仕方のないことですけど、映画の性的暴行の描写を観るのが、苦手なんです。目を逸らしたくなる。

 

というか、芸術としての性的暴行シーンって、一体何を目指しているのでしょうか。

リアルな女性の苦しみとかって、絶対に映画では表現できないと、そう思っています。

 

 

ラストシーンで、笑福亭鶴瓶が涙を堪えるのですが、そこで少し興醒め。無理やり感動ポルノのスキームへ誘導している感が否めない…。そして、エンドロールに何故か、「K」というポップスシンガーの甘い歌声とポップなメロディが…。いや、これは映画全体の陰鬱で禁欲的なイメージを殺しており、完全に興醒め。